社内電話帳のために、月500円台のレンタルサーバーを1台借りた。その中に入っているNextcloudは、電話帳だけのソフトではありません。ファイル共有もカレンダーもチャットも最初から入っていて、使っても料金は増えません。

ただし共用のレンタルサーバーには限界があります。「入っているから全部使える」わけではありません。この記事では、電話帳のついでに使える機能と、共用サーバーでは手を出さないほうがいい機能を分けます。

当サイトが実機で確認したのは、連絡先(CardDAV)をスマホに同期するところまでです。この記事のそれ以外の機能については、公式ドキュメントに書かれている要件と、共用レンタルサーバーの仕様から整理したもので、当サイトでは動かしていません。出典は各項目にリンクしています。

結論:共用レンタルサーバーで使えるもの・使えないもの

機能何ができるか共用レンタルサーバーでの現実
連絡先
(Contacts)
社内電話帳をスマホに自動同期◎ 当サイトで検証済み
カレンダー
(Calendar)
全社の予定をスマホのカレンダーに同期○ 電話帳と同じ仕組み
AndroidはアプリがPeopleSyncでは足りない
ファイル共有
(Files)
社内ファイルの共有、期限付きの配布リンク○ 容量と規約の範囲で
タスク・メモ
(Tasks / Notes)
個人・部署のToDo、議事メモ○ 軽い
チャット・通話
(Talk)
社内チャット、1対1〜少人数の通話△ 少人数まで
全社会議には向かない
同時編集
(Nextcloud Office)
ExcelやWordをブラウザで共同編集× 別のサーバーが必要
◎=当サイトで実際に動かして確認/○△×=公式ドキュメントの要件からの判断(当サイト未検証)。

重いのは「映像」と「同時編集」の2つだけです。文字とファイルを置くだけの機能は、電話帳と同じサーバーでそのまま動きます。

カレンダー:電話帳と同じ仕組みで、予定も配れる

社内電話帳はCardDAVという規格でスマホに同期しています。カレンダーはCalDAVという、すぐ隣にある規格です。サーバーもURLも同じで、スマホ側で追加するアカウントの種類が変わるだけです。

連絡先(CardDAV)カレンダー(CalDAV)
iPhone標準機能だけでOK標準機能だけでOK
AndroidPeopleSync(無料)PeopleSyncでは同期できない
DAVx⁵ が必要
Mac標準の連絡先標準のカレンダー

Androidだけ注意してください。当サイトが全社配布用に勧めているPeopleSyncは連絡先専用です。カレンダーも配るなら、連絡先・カレンダー・タスクに対応したDAVx⁵に替える必要があります。DAVx⁵はGoogle Play版が有料、F-Droid版が無料なので、人数分の費用がかかるかどうかがここで変わります。

接続に使うURLの形はNextcloudのCardDAV URLまとめと同じ考え方で、末尾が連絡先用かカレンダー用かの違いです。

使いどころは「全社で見る予定」です。会議室の空き、シフト、来客予定、休業日。個人の予定まで全部ここに移す必要はありません。電話帳と同じで「全員が同じものを見る」ことに価値がある予定だけを置くと、運用が続きます。

ファイル共有:「あのファイルどこ?」を減らす

Nextcloudの本来の機能はファイル共有です。社内電話帳はそこに後から足したアプリのほうです。つまりファイル共有については、いちばん作り込まれた部分がそのまま使えます。

  • 期限付き・パスワード付きの共有リンクを発行できる(メール添付をやめられる)
  • 部署ごとのフォルダを作り、グループ単位で権限を付けられる
  • PCに同期アプリを入れれば、デスクトップのフォルダとして扱える
  • 削除してもゴミ箱と版数(バージョン)から戻せる

ただし「容量無制限の保管庫」ではありません。共用レンタルサーバーはWebサイトを動かすための契約です。ディスク容量、転送量、ファイル数(inode)の上限があり、会社のデータを丸ごと預ける置き場としては作られていません。バックアップの保管庫として使ってよいかは、契約先の規約で確認してください。

容量の目安は契約プランによります。社内電話帳だけならデータは数MBで済みますが、ファイル共有を本格的に使うなら、契約するプランの容量を先に見てください。各社の容量と料金はNextcloudが動くレンタルサーバーはどれかにまとめています。

なお「ファイル共有のためにSaaSをもう1つ契約する」必要が無くなるのは、そのままコスト削減になります。この観点はkintoneは高すぎると言われたらで金額にしています。

Talk(チャット・通話)はどこまで使えるか

文字のチャットは軽い機能です。社内連絡の置き場として使うだけなら、共用サーバーでも無理はありません。問題は通話です。

Nextcloud Talkは、追加のサーバー(High Performance Backend)を置かない構成だと参加者どうしが直接つながるP2P方式で動きます。公式ドキュメントはこう書いています。

構成参加できる人数の目安必要な帯域
追加サーバーなし
(P2P)
典型的な構成で20人程度1Mbps ×(参加者−1)
High Performance Backend ありアクティブな参加者で30〜50人以上
(見るだけの参加者は数百人)
—
Nextcloud Talk 公式ドキュメント(scalability)の記載に基づく。

この「1Mbps ×(参加者−1)」が効いてきます。10人が集まると、1人あたり9人分=9Mbpsを送り続けることになります。負荷がかかるのはサーバーではなく、参加者それぞれの回線と端末です。

High Performance Backendは、共用レンタルサーバーには置けません。常時動くプログラムを自分で立てる必要があり、Webサイト用の共用サーバーでは動かせないためです。全社会議やウェビナーをNextcloudでやるのは、最初からあきらめてください。

現実的な線引き
○ 社内の連絡や相談をチャットで流す/1対1の通話/数人での打ち合わせ
× 全社会議/取引先を招いたビデオ会議/大人数の画面共有

同時編集(Nextcloud Office)は共用サーバーでは動かない

ブラウザでExcelやWordを同時編集する機能もありますが、これは別のソフト(Collabora Online)を動かして実現しています。Nextcloudに同梱できる版もありますが、公式の要件は次のとおりです。

  • Linux の x86-64 または ARM64
  • カーネルのFUSE対応(同梱版はAppImageという形式で動くため)
  • glibcベースのディストリビューション、Fontconfig
  • 2CPUコア、1GBのメモリ+利用者1人あたり100MB

共用レンタルサーバーでこれを満たすのは、まず無理です。他人と同じサーバーを分け合う契約なので、カーネルの機能や常駐プログラムを自由に使うことはできません。

ここは割り切ってください。ファイルの置き場はNextcloud、同時編集が必要な資料はGoogleドキュメントやMicrosoft 365、という分担で困ることはほとんどありません。Nextcloudに置いたOfficeファイルは、ダウンロードして普通に開けます。

機能を増やす前に、やっておく設定が2つあります

1. 定期実行(cron)を5分おきに設定する

Nextcloudは、通知の送信や古いファイルの掃除をバックグラウンドで定期的に処理します。公式ドキュメントは3つの方式を挙げ、OSのcronを5分おきに実行する方法を推奨しています。初期設定のAJAX方式は「最も信頼性が低い」と書かれています。ページを開いた人がいるときにしか処理が動かないからです。

共用レンタルサーバーでも、管理画面からcronを設定できることが多いです。カラフルボックスの場合はcPanelのcron設定から登録します。

電話帳だけなら気にしなくても動きます。通知やファイル共有まで使い始めると、「共有リンクの期限が切れない」「通知が来ない」といった形で効いてきます。

2. PHPのメモリを確認する

公式のシステム要件は1プロセスあたり最低128MB、推奨512MBとしています。共用レンタルサーバーはこの上限が決まっているので、ファイル共有で大きなファイルを扱う前に、管理画面で確認してください。あわせてPHPのバージョンも、サーバー側で選べる最新のものに合わせておきます。

何を載せて、何を載せないか

載せてよいもの載せないほうがよいもの
社員の連絡先(社内電話帳)全社ビデオ会議
全社で共有する予定(会議室・シフト・休業日)同時編集が前提の資料作成
部署で共有する数十GB規模のファイル会社のデータ全体のバックアップ
社内の連絡・相談のチャット顧客の個人情報の大量保管

右側は「共用サーバーの性能が足りない」か「預け先として説明できない」のどちらかです。社員名簿を外部のサーバーに置く時点で個人情報保護法でいう「委託」にあたるので、置くものが増えるほど説明の責任も増えます。この観点は社内電話帳を置くサーバーの選び方と安全に運用する設定チェックリストにまとめています。

まとめ

  • 電話帳のために借りたサーバーで、カレンダー・ファイル共有・チャットが追加費用なしで使える
  • カレンダーは電話帳と同じ仕組み。ただしAndroidはPeopleSyncでは足りず、DAVx⁵が必要
  • Talkの通話はP2P。公式の目安は20人程度で、帯域は1Mbps×(参加者−1)。全社会議には使わない
  • 同時編集(Office)は共用サーバーでは動かない。GoogleやMicrosoftと分担する
  • 機能を増やす前に、cronを5分おきに設定し、PHPのメモリを確認する

まずは電話帳だけで始めて構いません。動いてから、必要になった機能を1つずつ増やせばよい。それが同じ料金に全部入っていることの意味です。

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